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感想文

本や映画や、いろんなことの感想文を書いています。

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動物園について思うこと その3

nemurenai-same.hatenadiary.jp

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突然何かが頭に落ちてきて、びっくりして思わず「うわっ!」と声をあげてしまった。

 

私は以前、後ろから飛んできたカラスに、頭を踏み台にされたことがある。
園内はカラスがとても多いし、だからまた、カラスに踏まれたんだと、とっさに思った。

 

それとほぼ同時に「今の音なに?」と長男。

 

そしてキョロキョロと周囲を・・・下を見ると・・・

 

スズメよりは大きくて、ハトよりは小さい、ムクドリと同じぐらいか、それより少し小さいくらいの、ウグイス色の鳥が1羽、地面に落ちていた。

 

 

そして

 

苦しそうに

 

一呼吸、二呼吸した後

 

静かに

 

ゆっくり

 

目を閉じた。

 

 

私の頭に落ちてきたのは、この鳥だ。

 

 

「わかった!さっきの音、この鳥がガラスにぶつかった音だ!この鳥、ガラスにぶつかって落ちたんだ!ほら、ガラスのあそこらへん、鳥の羽がたくさんついてる!」

と、チンパンジーのいる場所を囲うガラスの上の方を指さす長男。


長男は、私が「うわっ」と声をあげたその直前に『ばん!!』という大きな音を聞いたのだそうだ。

 

言われて初めて気付いたが、確かに、チンパンジーは屋外の比較的広くて、とても高い鉄塔のあるところで飼育されているので、その周りをものすごく背の高いガラスで囲われている。私たちは、きれいに磨かれたそのガラス越しに、チンパンジーを見ていたのだ。

 

 

きっと、そこにガラスがあることに、野鳥は気づけないだろう。

 

 

長男の指さす先には確かに、この鳥のものであろう小さな鳥の羽がたくさんくっついていた。

 

この鳥は、チンパンジーのオリを囲うガラスに、スピードを落とすことなく思い切り体当たりし、私の頭に落ちてきたのだ。

 

 

 

1年間で一体何羽の野鳥が、この、よく磨かれた背の高いガラスにぶつかって落ちるんだろう。

 

 

 

鳥が落ちてくるその直前まで、動物園もけっこういいかも・・・と思い始めていた私。

そんな私に、自然が、

 

これでも動物園はいいねって言える?!

 

と、がなり立ててきたような、そんな気さえした出来事だった。

 

 

幼稚園児や保育園児が大勢いる動物園。

そんなところに、この鳥は放っておけない。

 

円山動物園に入ってからずっと考えてきたことが一瞬でひっくり返され、頭が真っ白になりながら、とりあえず子供らに「この鳥、可哀想だから飼育員さんに届けてあげようか」とやっと言い、小鳥を抱き上げた。

 

小鳥は、骨が折れているのがはっきりとわかるくらいふにゃりとしていて

 

あたたかかった。

 

小さなひとつの命が

 

私の手の中で

 

ゆっくりと消えていくのを感じながら歩いた。

 

飼育員さんはなかなかいなくて、けっこうな距離を歩いた。

両手に包んだ小鳥が、すれ違う、たくさんの幼稚園児の目に触れないように、かばいながら。

 

 

歩きながら、この鳥が落ちてきた下にいたのが自分でよかったと思った。

遠足で来てる大勢の幼稚園の子たちの列に落ちなくてよかったと。

 

 

 

動物園にいる動物は、オリの中だけじゃない。

オリの外には本物の野生動物がいて、彼らにとって、動物園はどんな存在なのか。

あの目の細かい網は

あの、緑色で、目を凝らさないとよく見えない大きなネットは

あの透明なガラスは

ライオンが食べ残したエサは

サルの鳴き声は

 

そういえば昔、動物園のサル山のサルが、1羽のハトを寄ってたかっていじめてるのを見たことがある。

子供たちは泣き出し、見学していた人はみんなその場から離れ、私は慌ててそばにいた飼育員さんに伝えたけど「あー、遊んでるだけだから大丈夫大丈夫」と、笑ってやりすごされてしまった。でもとても大丈夫だったとは思えない。最後までは見ていられなかったけれど、きっとあのハトはサルたちに殺されてしまっただろう。にぎやかな駅のすぐ近くの小さな動物園。ハトは、そんなところにまさかサルがいるなんて、思いもしなかったのかもしれない。

 

 

 

遠くの野生動物を連れてきて飼育している動物園が、その場所に棲んでいる野生動物を殺しているんだ。

 

きっと、少ない数じゃない。

 

自然の多い、郊外の広々とした動物園ほど、犠牲になる動物の数は多いに違いない。

 

 

 

飼育されている野生動物にとって、どんなに居心地のいい動物園だったとしても、むしろ居心地のいい動物園であればあるほど、本来、そこにいていいはずだった野生動物を犠牲にしているんじゃないか。オリの中のレッサーパンダにとっては天国でも、野のタヌキにとっては迷い込んだら最期、生きて出られない地獄なんじゃないか。

 

そんな施設の中で、子供たちは本当に、自然のすばらしさを学ぶことができているんだろうか。

 

 

ガラスに当たって落ちて死んだ小鳥を見た長男や長女は、どう感じただろう。

 

 

そんなことをまた、もんもんと考え始めてしまった。

 

 

やっと出会えた飼育員さんは、私の手の中の小鳥を見ても特に驚いた様子もなく

「あー、もう死んでますねー。ありがとうございます。」

と、携帯していたグローブのような軍手をはめ、慣れた手つきで小鳥を受け取った。

 

 

飼育員さんにとっては、死んだ小鳥を拾う作業など、ありふれた日常なのだろう。

自然がいっぱいの森のように見えても、実は、ガラスや、網や、オリだらけの動物園の中では。

 

 

 

 

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