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感想文

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いくえみ綾『カズン』を読んだ

読書感想文

いくえみ綾さんは、昔からとても好きな漫画家さん。

 

絵もストーリーもシンプルでごちゃごちゃしてないし、セリフも少ないし、登場人物の表情も決して豊かじゃない。

 

リアルではそうであるかのように、すごく悲しいときも、すごく嬉しいときも、泣いたり笑ったり叫んだりとか、あんまりしない。無表情なときさえある。

 

キャラクターの心情を表すセリフも、とても少なくて、必要最低限に抑えているような気がする。

 

そして後になって、あの時あのシーンで本当はこんな風に思っていたんだとわかったとき、その人物の心の叫びが、ぐさぐさと胸に突き刺さってきて、それは不思議と、自分の感情とリンクしてしまうのだ。

 

そんな、不思議な魅力と空気感のある世界をつくる漫画家さん。

 

いくえみ綾さんの作品を全部読んだわけではないけれど、本屋さんで見かけるとつい手に取り、そして今まで、ハズレだった、おもしろくなかったと思ったことは、1度もない。

短編も、長編も。

 

そんないくえみ綾さんの作品『カズン』を読んだ。

 

カズン 1 (Feelコミックス)

カズン 1 (Feelコミックス)

 

 

 

カズン 2 (Feelコミックス)

カズン 2 (Feelコミックス)

 

 

カズン 3 (Feelコミックス)

カズン 3 (Feelコミックス)

 

 

以下、ネタバレ感想文です。

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この漫画は、はっきりと

 

過食症

 

を題材にした漫画です。

 

でもそれを前面に出しちゃうと、本当に読んでほしい、伝えたい人に読んでもらえないかもしれないから、カモフラージュするための2巻までだったのかもしれない。

 

これ、雑誌の連載で読んでた人、途中から空気がガラッと変わっちゃって、それまでをむしろ全否定みたいなストーリーが展開しはじめて、すごくびっくりしたんじゃないかなぁ。そしてドキッとして、目が離せなくなったんじゃないかなぁ。

 

 

 

 

主人公は、高校を卒業したばかりの『つぼみ』。

冴えない、そしてちょっとぽっちゃりめのつぼみは、フリーターとなり、レンタルビデオ屋で働く。

 

そこで出会う、ちょっといけてる気味の男子『シロ』。

 

シロが、つぼみのいとこの人気モデル『ノニ』のファンだったことをきっかけに、2人は仲良くなっていく。

 

そんなある日、勤務中にぶつかってしまったお客さん『茄子川さん』に恋をするつぼみ。

 

 

今まで『それなりの選択をして、それなりの結果』の中で生きていたつぼみは、変わりたいと思い、ストイックなダイエットを始める。

 

 

高校デビューして、茶髪になって派手になり、変わってしまったと思っていた、おさななじみの『栄子』。

 

シロとつぼみの仲に嫉妬して、不安定になり、つぼみにちくっと嫌味を言うシロの彼女『りっちゃん』。

 

天使のように可愛い、いとこの『ノニ』。

ただのミーハーだと思っていた

そしてバツイチの『茄子川さん』。

 

自分に自信がなくてコンプレックスの塊だったつぼみは、ダイエットに成功し、別人のように可愛くなる。

 

 

だけど 

 

失恋。

 

それだけじゃない。

 

栄子のこと、シロのこと、りっちゃんのこと、自分自身のこと。

 

 

失恋をきっかけに、もやもやしはじめた心を紛らわすために、つぼみはいつしか、食べ物に依存していく・・・。

 

 

 

食べても食べても満たされない。

頭の中はいつも食べ物のことでいっぱい。

 

 

『あたしの内(なか)を満たさなきゃ』

 

 

つぼみの体の輪郭いっぱいのおかし。

そのページに描かれた狂気。

 

つぼみがこんな風になってしまうのは、最終巻の3巻に入ってから。

でも3巻こそが、この漫画の主旨。きっとそう。

 

コンプレックスいっぱいだったつぼみ、恋をしたつぼみ、痩せて可愛くなったつぼみ、そして振られたつぼみ・・・。そんな2巻までのいろんなエピソードが、どうでもいいもののように思える、導入にもなってない、むしろなくてもいい、そんな風にすら思える3巻の、独立した緊張感。

 

つぼみは2週間、ノニや、シロや、栄子や、そしてバイト先からの連絡も無視して、引きこもる。その間、つぼみが何をして過ごしていたかの描写は一切ないんだけど、公園で偶然会った『りっちゃん』に、食べ続けていたことを告白。

 

『食べものにばっかりお金使っちゃって、どんどんなくなって』

 

『親にばれるのいやだから、夜中にコンビニ行って』

 

『食べるとゴミがたくさん出るから、夜中にゴミ袋にまとめて捨てに行って』

 

『食べるだけ食べて、あとで吐けばいいんだと思って』

 

 

『過食症』という言葉は1度も出てこない。

 

でもこれらは、典型的な過食症の人の行動。 

 

吐けなくて、デブでぶさいくになってしまったと言うつぼみに、りっちゃんは

 

 

『吐くの苦手でよかったね』

 

『そんなのクセになったら大変だよ』

 

『吐くよりいいって』

 

『食ったら太る!これ自然!』

 

 

ちなみに。

りっちゃんは、ガリ体型です。

 

もしかしたら・・・りっちゃんは、吐くタイプの過食症なのかも・・・。

 

モデル事務所に所属して、ノニより有名になると宣言するりっちゃん。

そんなりっちゃんの姿がつぼみにはまぶしく映るんだけど、もしかしたらりっちゃんもまた、闇の中にいるのかもしれません。

 

りっちゃんに告白したことで、何かが変わり、バイト先に謝罪に行くつぼみ。

 

とりあえず、人としての事は、しておかなきゃいけないよなぁと思った。

 

見た目がぶさいくに変わってしまっても

 

『働く意欲』とか

 

『人間関係』とか

 

そこらへんを失くしてしまっては、本当にダメになると思った。

 

 

ダメ人間にはなりたくない。

 

だけど・・・・・・お腹がすく。

 

お腹がすいた。

 

 

バイト先の同僚の陰口を聞いてしまい、またコンビニに足が向きそうになる。

 

だけど

話を聞いてくれたりっちゃんや

心配していてくれた妹やシロの存在に気づき

太っても

好きでいてくれる人たちがいることを知り

つぼみはまた、頑張る決心をする。

 

 

磨け デブ

 

さぼった デブ

 

がんばれ デブ

 

心も

 

体も

 

磨け

 

磨け

 

がんばれ

 

もいちど

 

 

遅いことは ない

 

とりかえしのつかないことは ない 

 

 

そして「あたし、太って、元に戻っちゃって、まるっきり元どおり!」と言うつぼみに、茄子川さんは

 

 

『経験があれば、まるっきり元には戻んないんじゃない?』

 

 

その言葉を胸に、またがんばるつぼみ。

 

 

ワタシは

 

経験をした分

 

落ちても

 

元のところまでは

 

落ちないのヨ

 

 

これ、『ワタシは』のところを『アナタは』に変えていいと思う。このひとことこそ、作者のいくえみ綾さんが、読み手に伝えたかったことだと思う。

  

ほら普通、少女漫画の主人公の女の子って、痩せてようが、太ってようが、基本かわいらしく描いてあるじゃないですか。

 

でもその辺も、いくえみ綾さんの漫画なので、容赦ないです。

太って、むくんだつぼみは、ぶさいくでした・・・・・・

 

 

 

 

 

実は私も昔、過食症みたいな時期があって、今より20キロくらい、体重おもかった時があるんです。今は逆に痩せ体型で、会う人ほぼ全員に「ほそいね」って言われます。

 

なんて、ここに書いちゃうとこが、病んでるでしょ?

そう。私、自分の今の体型にすごくこだわりがあって、もし太ってしまったら、普通体型になってしまったら、自分の価値が下がるとすら思っています。

 

でももし、この先、もしそうなってしまった時・・・私は、つぼみみたいに、ちゃんと仕事に行けるだろうか?太った自分を人前にさらすとか、耐えられるだろうか?

 

 

見た目コンプレックス。

 

 

そんなときは、この漫画の中の、引用した言葉たちをくりかえしくりかえし唱えようと思う。

 

 

可愛い表紙とキラキラなストーリー展開にだまされるけど、とてもメッセージ性の強い漫画です。ここでほとんどネタバレしちゃったけど、実は、物語が動く、重要なできごとのいくつかは書いていません。そして結末も。

 

 

ぜひ、読んでみてほしいなと、思います。

 

 

カズン 1 (Feelコミックス)

カズン 1 (Feelコミックス)

 

 

 

カズン 2 (Feelコミックス)

カズン 2 (Feelコミックス)

 

 

 

カズン 3 (Feelコミックス)

カズン 3 (Feelコミックス)

 

 

 

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